としょかんライオンからみる柔軟性

価値観を考える絵本

こんにちはmofuです。

今回は「としょかんライオン」ミシェル・ヌードセンさく ケビン・ホークスえ 福本友美子やく を見ていこうと思う。

この絵本に出会ったのは、本屋さんの絵本コーナーでの立ち読みだった。可愛いライオンの絵の表紙につられて手に取ったんだっけな。読み終わる頃にはひっそりと泣いていた。その頃の自分は居場所がないような感覚がどこかあって、何かで心を埋めたかった。そういう時に絵本読みがちだよね。

ライオンみたいに人気者でも、誰かのためになっているでもないし、決まりを守るでも破るでもないけど、そこに居るだけで許される存在に憧れていたんだと思う。読み終えて、ライオンに居場所があってよかったなって思った。自分も思い切って飛び込めば、居場所できるかな?って考えたり。心地よい場所って降ってはこないから、自分を実験体に色々と試すしかないって思ったり。もっと自分も柔軟に。最低限のルール、マナーは大事だけど、あれもダメ、これもダメでは誰にとっても居心地悪くなってしまう。周りももっと柔軟に。そうやって、みんなが生きやすくなったらいいね。
みんなも絵本読んでみてね。買わなくても、買っても、立ち読みでも、図書館で借りてきてもいい。心が揺さぶられる作品に出会えたらいいね。

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それではあらすじを書いていこう。

ある日、図書館にライオンが現れます。図書館の館長のミス・メリウェザーは驚きますが、ライオンが静かにしていればOKと認めます。ライオンは子どもたちへの読み聞かせを手伝ったり、雑務をこなしたりして、次第に図書館の一員として受け入れられます。しかし、ある日、ミス・メリウェザーがケガをし、ライオンは助けを求めるために図書館のルールを破ります。ライオンはしばらく姿を消しますが、最終的にはその行動が正しかったと認められ、再び図書館に戻ってきます。

ざっとしたあらすじはこんな感じ。では詳しく見ていこうと思う。

ルールって何だっけ?

「あるひ、としょかんに ライオンが はいってきました。かしだしカウンターのよこをとおり、ずんずんあるいていきます。」

この物語は図書館にライオンが入ってくるというところから話が始まる。図書館=みんなの場所で静かな場所。ライオン=怖い。というのが一般的なイメージだろう。一見交わらなさそうな2つが交わって物語が始まる。すごく絵本らしい。

もちろん図書館員のマクビーさんは慌てて館長のミス・メリウェザーに報告に行きます。

「メリウェザーかんちょう!」

「「はしってはいけません」と、メリウェザーさんは、かおもあげずに いいました。」

マクビーさんがライオンが図書館にいることを告げるとメリウェザーさんは聞きます。

「で、そのライオンは としょかんのきまりを まもらないんですか?」

マクビーさんは「いえ、べつに そういうわけでは・・・・・・」と言い

メリウェザーさんは「それなら そのままにしておきなさい」と言いました。

メリウェザーさんは、きまりについてはなかなかうるさいらしく、マクビーさんが慌てて報告に来た時には「はしってはいけません」と一喝する。けど、ライオンについては、決まりを守ってないわけではないと報告を受け「そのままにしておきなさい」と言っている。でも図書館のきまりにはライオンが来た時のことは書いていない。

「やがて、おはなしのじかんが はじまりました 『ライオンがおはなしをきいてはいけない」というきまりはありません。」

図書館のおねえさんは少しドキドキしながら絵本を読み始める。ライオンは1つ目も2つ目もその次のお話も聞いていた。お話のじかんが終わると、まだ聞いていたかったのか、子どもたちの顔を見つめ、おはなしのおねえさんの顔を見つめ、閉じた絵本を見つめた。

「それから、おおきなこえで ほえました。」

その声を聞き、図書館長の部屋からメリウェザーさんがつかつかと歩いてくる。

「おおきなこえをだしたのは どなたですか?」

メリウェザーさんはライオンの前に来ると

「しずかにできないのなら、としょかんからででいっていただきます。それが きまりですから!」

と言う。ライオンは悲しそうに唸り、小さな女の子がメリウェザーさんに聞く。

「しずかにするって やくそくすれば、あしたも おはなしのじかんに きていいんでしょ?」

ライオンは唸るのをやめて、メリウェザーさんの顔をじっとみ、メリウェザーさんもライオンを見つめると

「ええ、いいですとも。しずかにできる、おぎょうぎのいいライオンなら、もちろんあしたも おはなしのじかんにきていいですよ」と言う。その言葉に子どもたちは喜んだ。

図書館はみんなの場所。ライオンもそのみんなのうちのひとり。その反面、図書館はルールを守る場所。メリウェザーさんの基準は図書館の決まりを守ってさえいれば受け入れるといったもの。多様性を認めた上でも、みんなの場所を守るにはルールは必要で、そのルールを破ればその場所には入れられない。

日本人として学生時代に散々言われてきたことなので、心に刻み込まれているが、文字にしてみるとその意味は、多様性が叫ばれる中ではとても重要なことだと思う。みんなが安心して過ごすためにあるのがルール。ただ、ルールも時代の流れに沿って柔軟に変えていかなければならない。もちろん元からそこに集う人たちに寄り添ったルールであることが大前提ではあると思う。ルールもバランスを崩すとおかしな方向へ行ったりする。バランス感覚のいい人で周りの言葉もしっかり聞こえる人がルールを作って欲しいものだな。

ルールに違和感を抱く人

「ライオンは、つぎのひに、またやってきました。」

「ずいぶん はやいですね。おはなしのじかんは、3じからですよ」

とメリウェザーさんは言う。動こうとしないライオンに何かお手伝いをしてもらおうとメリウェザーさんは言い、おはなしのじかんが来るまで、百科事典のホコリを払ってもらう。次の日も、ライオンは早くからやってき、ライオンにお手伝いをしてもらった。やがてライオンは、いわれなくても色々なお手伝いをし、子どもを背中に乗せ高いところに手が届くようにしてあげた。あとはお話の時間まで、絵本の部屋でゆったりと寝そべっていた。

図書館に来る人は、最初は少し怖かったがだんだん慣れてき、図書館にライオンがいることなかなかいいなあと思うようになった。

「ライオンのおおきなあしは あるくとき ちっともおとをたてないし、おはなしのじかんには こどもたちが ゆったりと ライオンによりかかっていられます。それに、ライオンは もうとしょかんのなかで ほえることはありませんでした。」

「やくにたつ ライオンだね」や「としょかんは、ライオンがいなければやっていけないよね」とみんなはいい、ライオンが通りかかると、優しく頭を撫でた。

しずかにすれば図書館にライオンが来てもいい。と言うルールを新たに作った。ライオンは図書館に来れるように静かに過ごすし、お手伝いもして、図書館の空気に馴染んでいった。礼儀正しいライオンに対して、このルールは正しかったように思う。

でも、新しくできたルールには違和感を抱く人もやっぱりいるもので・・・。

図書館員のマクビーさんはおもしろくありません。図書館はライオンが来る前からちゃんとやっていたし、ライオンが居なくたってやっていける。それにライオンにきまりのことが分かるはずもない。おまけに、図書館にライオンがいるなんて聞いたことがない。

新しくルールを作ると言うことに納得いかない人が出てくるのは当然のことだ。今までうまくいってきたことが崩れるかもしれない。そんな心配が出てくる。そこは本当に信頼関係の問題だと思う。

マクビーさんは「役にたつライオン」や「図書館はライオンが居なければやっていけないよね」と言う言葉に自分の居場所を奪われそうで不安になって、面白くないと思ったのだと思う。まるで自分が役立たずと言われているように感じたのではないかな。そう感じている人がいることも、ルールを作った人は知っておく必要があるし、そこには寄り添うことだって必要だと思う。メリウェザーさんにも伝わってるといいんだけどな。

ルールを守るよりも大切なことがある

あるひ、ライオンはお手伝いを一通り終え、まだ何か手伝えるかもしれないと思いメリウェザーさんの部屋へきました。メリウェザーさんはライオンに、本を一冊貸し出しカウンターに運んで欲しくて、その本を棚の一番高いところから、踏み台に乗って取り出そうとする。もう少しで届きそうなその時、踏み台から落ちて倒れてしまった。メリウェザーさんは起き上がることができずマクビーさんを呼ぶ。しかしマクビーさんは、貸し出しカウンターにいて聞こえない。メリウェザーさんはライオンにマクビーさんを呼んできてと頼んだ。ライオンは廊下を走っていった。

「「はしっては いけません」と、メリウェザーさんは こえをかけました。」

ライオンは貸し出しカウンターに足をかけてマクビーさんを見つめたが、取り合ってくれず、メリウェザーさんの部屋の方に鼻を向け、くいん、くいんと泣くがマクビーさんはそれも知らん顔で、ついにライオンはマクビーさんをじっと見つめ、口を大きく開けました。

「そして、いままで いきてきたうちで、いちばんおおきなこえで ほえました。」

「マクビーさんは、びっくりして いいました。「しずかにしなきゃ、いけないんだぞ! きまりをまもってないじゃないか!」」

マクビーさんは走らないように気をつけながらメリウェザーさんに報告に行く。

「かんちょう!ライオンが、きまりをまもってません!きまりをまもってません!」

ライオンはというと、決まりを守れなかったので、仕方なく、うなだれながら出口へ向かう。

この対比のイラストがすごくいい。マクビーさんは走らないようにきまりを守りながらメリウェザーさんに報告に行く。きまりを破ったライオンは出口へと向かう。ルールを守っているものがその空間に残れて、ルールを破ってしまったら去らなければいけない。ルールとはそう言うものだよねって再認識させられる。でもこの場合ルールを破ってはいるがそこには理由がある。怪我をしたメリウェザーさんを救うためにはそうするしかなかった。ルールを守るよりも大切なことがある。

「マグビーさんは、メリウェザーさんのへやに とびこみました。」

「メリウェザーかんちょう、どちらですか?」

メリウェザーさんは床に倒れながらも

「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです。いくら としょかんのきまりでもね。」

ライオンからもらっていたもの

「つぎのひのとしょかんは、いつもとどこか ちがっていました。」

メリウェザーさんは左手にギプスをはめているし、ライオンの姿も見えない。メリウェザーさんはお医者さんから、あまり働きすぎないように言われており、「ライオンが てつだってくれるといいのに」と思っていた。3じになり、メリウェザーさんは絵本の部屋まで行ってみますが、ライオンはいない。
図書館に来た人たちも、いつものように「あのおおきな ふさふさのかお」をみたいと思っていた。でもライオンはとうとうやって来ず、次の日もその次の日も来なかった。

ある日の夕方、仕事を終えたマクビーさんはメリウェザーさんの部屋に寄る。「なにか ごようがあれば、おてつだいしましょうか?」とマクビーさんは聞くが、メリウェザーさんは「ありがとう。でも けっこうよ」と窓の外を見ながらとても静かに言った。

「いくらとしょかんでも、そこまでしずかにしなくてもいいのに。」

マクビーさんはそう言われても何かできることがあるような気がした。

ライオンが居なくなっただけ、以前の図書館に戻っただけ。それなのにこんなにもみんな寂しそう。
ライオンにとって図書館が居場所になっていたのはそうだけど、みんなにとってはいつの間にか、「ライオンがいる図書館」が居場所になっていた。ライオンが居てのみんなの図書館になった。
「いくらとしょかんでも、そこまでしずかにしなくてもいいのに。」と言う言葉がすごく寂しさを出している。メリウェザーさんの小さな声に対してマクビーさんが思ったことなのに、ライオンが居なくなった図書館の館内を表しているように聞こえる。ライオンからたくさんのものをもらっていたんだ。いなくなって初めて気づくその存在の大切さ。そんな感情をまとめたすごくいい一文だな。

ルールの柔軟性

「マクビーさんは、としょかんをでましたが、まっすぐいえにはかえりませんでした。」

図書館の周りを歩き、車の下や植え込みの向こうをのぞいたり、よその家の裏庭やゴミ置き場、木の上も調べた。ライオンを探している。

「マクビーさんは、きんじょをぐるっと まわって、また としょかんに もどってきました。するととしょかんのまえに ライオンが すわっていました。いりぐちの ガラスのとびらを みつめています。」

「こんばんは、ライオンさん」とマクビーさんは声をかけるがライオンは振り向かない。

「あのう、ごぞんじないかもしれませんが、としょかんのきまりが かわったんですよ」と、マクビーさんは いいました。

「おおごえで ほえてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときは べつ。つまりその、けがをしたともだちを たすけようとするときなど、ってことですけどね」

「ライオンのみみが ぴくっと うごきました。そしてこっちを ふりむきました。けれどもマクビーさんは、あるいていってしまいました。」

イラストでは雨の描写。ライオンが図書館の前でびしょびしょになってすわっていて、その寂しそうな表情が図書館の扉のガラス越しに映っているというイラスト。ライオンが居場所を失って寂しかった様子がわかる。そしてそんな様子を見て、ルールを忠実に守っている仲間ということを、マクビーさんもわかったのだろう。あれだけ面白くなさそうにしていたのに、ライオンが居なくなった図書館の雰囲気やメリウェザーさんの様子、今のライオンの様子を見て、ルールに柔軟性を持たせた。マクビーさんはライオンに対して、嫉妬心みたいなものを持っていたけど、ルールを一緒に守っていく仲間だと認識が変わったのだ。
ルールをしっかり守る気があるものに対してはこういった仲間意識が芽生える。ルールは柔軟に、だけど柔軟にしすぎてはいけない。何かを守るための目的意識が同じ仲間に対しては柔軟であるべきだし、ルールを守らない人に対してルールを柔軟にしたところで、目的がぶれて、何かを守るための団結力が削がれてしまう。

「つぎのあさ、マクビーさんは、メリウェザーさんのへやにいきました。「なんのごようですか、マクビーさん?」と、メリウェザーさんは、さびしそうなこえで しずかにききました。」

「あのう、ごぞんじないかもしれませんが」

「ライオンが いるんです。としょかんに」

「メリウェザーさんは、いすから とびあがると、ろうかへ かけだしました。」

「マクビーさんは、にやっとして、「はしっては いけません!」とこえをかけました。」

「でも、メリウェザーさんには、きこえませんでした。」

『たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです。いくら としょかんのきまりでもね。』

マクビーさんの「はしっては いけません!」からの「でもメリウェザーさんには、きこえませんでした。」がすごくいいです。これも普段から決まりを守っているメリウェザーさんだから許されることで、はしってはいけないと分かっているけど、走らずにはいられないくらい嬉しいということを表しているように思える。それを見て嬉しくて、マクビーさんはにやっとしている。

まとめ

ルールはその場に居たいのならば守らなければいけないものである。それは大前提として「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです。」という一文のように、わけがしっかりとしたものならば守れない時もある。そこにはある程度の柔軟性が必要。
子どもができたらちゃんとルールを教えて、そのルールを守らなかった時にまず、理由を聞こうと思う。


ルールが新しくどんどん変わっていく世界で、ルールを決めるときはバランスと寄り添いを大事にしたい。そこには「何のために?」という目的意識を一つにしておかないといかないという難しさもある。柔軟さも大事だが、目的意識がブレるなら考え直さないといけない。
図書館ならばみんなが使いやすいうようにという目的があって、そのためには、館内では静かにするといったルールが作られている。そしてみんなが使いやすいように、みんなが守っている。そこから今回の「としょかんライオン」のようにライオンが来た時のルールはどうするか?ライオンに対するルールはないけど、図書館のルールである静かにすることができるなら良い、や怪我をしたお友達を助けるためなら大声を出しても仕方ないなど、柔軟にルールを解釈していくことが大事なのだろう。

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