つみきのいえからみる忘れてはいけないこと

人生観が変わる絵本

こんにちはmofuです!

今回は、フランスが原作で2008年に日本で短編アニメーション映画にもなった「つみきのいえ」(仏題:La maison en petits cubes)絵・加藤久仁生 文・平田研也 を見ていこうと思う。そこから忘れてはいけないことについて考えていく。

この作品はアニメーション化されてすごく人気になったよね。絵本で見たのはそのあとかも。
泣き虫な私は、今読んでも絶対に、しかも何度も何度も泣いてしまう。涙腺崩壊作品です。みんな大切な人っているやん?親でも子どもでも、恋人でも夫婦でも、友達でも。その人との間には自分たちしか知らない軌跡がある。その中には楽しいことや嬉しいこと悲しいことたくさんあったと思う。でも何かきっかけがないとその素晴らしい記憶にフォーカスできない。日常を忙しく過ごしていたり、なあなあと過ごしていたり、みんなにはいろんな日常があるけども、一度立ち止まって大切な人との軌跡を思い返す時間をとってほしい。
スマホのアルバムを見て一緒に話すのもいいんじゃないかな。大切にしてきたものや感情、大切にしていきたいものが見えてもっと愛おしくなると思うから。


そんなことを考えさせてくれる大事な絵本。
絵本には不思議な時間が流れている。時間がゆったりと染み込んでくる。
内容をよく覚えておく必要なんてない。私も内容よりも読んだ時の感情と表紙の記憶ぐらいしかない。
その絵本を読んでどんな感情になったか、自分の生活にどんなことがあった時に読んだのか。そんな感覚的な記憶を大事にしていきたい。いつかその染み込んだ時間がふとした時に戻ってくる。
そんなささやかな優しいものとして自分の中に置いておきたい。そんな気持ちで絵本を読んでいます。
みんなも、買わずとも本屋さんで立ち読みしたり図書館で借りてきたりして絵に心揺さぶられまくってください。優しい時間が流れます。(PR:一応絵本のアフィリエイト広告入れています)



少し前置きが長くなってしまった。

じゃあ「つみきのいえ」がどういう話なのかを少し話そうかな。

【あらすじ】
おじいさんが住む家は、海の水が増えるたびに新しい家を建てなければ沈んでいってしまいます。ある日おじいさんは新しい家を建てている途中で大具道具を海に落としてしまいます。それをとりにいくために海に潜っていき、今まで建ててきた家の中に残された、大切な人との思い出を思い出していきます。そして今の生活を大切に、静かに過ごしていきます。

こういったところでしょうか。
では「つみきのいえ」からみる忘れてはいけないことをお話ししていきましょう。

おじいさんの暮らしとつみきのいえ

「このまちでは うみのみずがだんだん うえに あがってきてしまうのです。」

「すんでいた いえが みずのなかに しずんでしまうと、そのいえの うえに あたらしい いえを つくります」

「そのいえが また みずのなかに しずんでしまうと、そのうえに また あたらしい いえを つくります。」

前提として、海の水が上がってくるので家の上にまた家を作らないと生きてはいけないところに主人公は住んでいる。

「こうして、まるで つみきを なんこも つみあげたような こんな いえが できてしまったのです。」

つみきのいえはこうしてできた。確かに、だんだん上に積んでいく=つみき、と言える。家を積み木に見立てるところがなんといっても面白い。そしてこの前提がないとこの物語は深みをなくしてしまう。

「おじいさんは このいえに ひとりぼっちで すんでいます。 おばあさんが 3ねんまえに なくなってしまったからです。」

主人公はおじいさん。それも3年前に妻を亡くして、ひとりぼっちでつみきのいえに住んでいる。
おじいさんの日常は、家の中の釣り堀で魚をつってご飯のおかずにしたり、屋根の上で、卵を産むニワトリやパンを焼くための小麦を育てている。足りないものは行商人の船から果物や野菜、お花などを買う。
そしておばあさんが使っていたエプロンをつけてご飯を作ったり、近所のおじさんとチェスをしたり、遠くに住んでいる自分の子どもたちからの手紙を読んだりして毎日を楽しく過ごしている。夜になると外から聞こえる波の音を聞きながら、眠る。

すごく素敵な老後って感じがする。ここまで来るまでにたくさんの経験をしてきたのだろう。妻がいなくても料理ができるようになるまでにどれくらい時間がかかったのだろうか。近所のおじさんという友達もいる。子どもも、遠くに住んでいるけれど手紙をくれるような仲で、夜には波の音を聞きながら眠る。
おじいさんは今、幸せに暮らしている。それは誰が見てもそうだ!というだろう。

では、この幸せの土台ってなんなのだろうか?

幸せの土台

「そんな あるとしの ふゆのこと。また うみのみずが ゆかまで あがってきてしまいました。」

おじいさんは、また今の家の上に新しい家を作らなければいけない。昔はこの街にもたくさんの人が住んでいたが、みんな家を作り続けるのをやめて引っ越して行った、とある。おじいさんはどうかというと、

「けれども おじいさんは ぜったいに このいえに すむのを やめませんでした。」

どうして?
もう体力的にもキツいだろうし、子どもの近くに住むとか色々考えられるのに、「ぜったいに」この家から離れない。ああそうか、おじいさんもきっと色々考えたよね。その上での「ぜったいに」なんだ。
それでもここに住み続ける。そこには理由があるはずだ。おじいさんが幸せでいるための理由が。

「ところが あるひのこと、いえを つくっていた おじいさんは だいしっぱいを してしまいました。」

「あっ・・・・・・! だいくどうぐが・・・・・・」

家を作るための道具の、のこぎりやかなづちが、つみきのいえの下の下の下の家まで海の中を落ちていってしまう。おじいさんは水の中を潜ってとりにいく。大工道具は3つ下の家に落ちていてそこは、おばあさんと一緒にすんでいた時の家だった。

「おじいさんは「あっ・・・・・・」と おもいました。」

なんの「あっ・・・・・・」だろう。思い出したときのかな。幸せな日常の中では思い出すことのなかった悲しい記憶。

「それは ずっとまえの はるのひ。おばあさんは このいえで、おじいさんと おばあさんの こどもたちに みまもられながら、なくなりました。」

「おばあさんが なくなるとき、おじいさんは おばあさんの てを いつまでも にぎっていました。」

「おじいさんは もっと したのいえへ もぐってみたくなりました。」

おじいさんは下の家に潜るたび、その家にすんでいた時のことを思い出す。
街でカーニバルがあった日に、おじいさんとおばあさんのこどもたちが、まごたちを連れて、おばあさんが美味しいパイを焼いたこと。
この家では、おじいさんとおばあさんの一番上の娘が、おばあさんのしつらえたドレスを着て、綺麗な花嫁になって出ていった時のこと。
この家にすんでいた時には、飼っていたこねこがいなくなって、こどもたちが悲しくて泣き、みんなでこねこへのお手紙を書いてビンに入れて海に流したこと。
この家は、おじいさんとおばあさんに、最初の赤ちゃんが産まれて、若かったおばあさんは小さな洋服を作り、おじいさんはこのこのためのブランコを作ったこと。

「したのいえへ したのいえへ もぐっていくたびに、どのいえにも どのいえにも おもいでが のこっていました」

想い出ってやっぱり大事だね。
でもきっかけがないと、普段の生活をしていて思い出すことはない。悲しいことも楽しいこともぜんぶ、素敵な想い出だし、自分を作りあげているものだと思う。
おじいさんにとっては大工道具が海に沈んでいったというきっかけがなければ、こんなにも鮮明に思い返すこともなかったんじゃないかな。というかこんなに鮮明に覚えているもんなんだね。
過去を振り返ることで、自分の人生がどんなに豊かだったのか、自分の人生がこんなにも大切なものなんだと再認識できる。

つみきのいえと同じように、人の人生は過去の自分がしてきたことが積み重なってできている。その土台となっているのは自分。そして、幸せの土台は、自分が過去にしてきた経験や体験や感情であり、全てを受け入れた時に幸せという形で周りにも見えるようになる。
受け入れ方は、過去を思い返していろんな感情になって、向きあうこと。
「あのひと幸せそう!それに比べて私は・・・」と思うことがある。それはその人がどんなストーリーを歩んできたかという歴史のうえに成り立っているもので、決して比べられるものではない。


自分には自分のストーリーがある。


それを受け入れて大事にしてあげよう。悲しかったことも嬉しかった事も、自分の財産(経験)になっている。多分だけど、誰かから見ると、「あなた幸せそうね!」って思われているから。多分だけども。

忘れてはならないこと

そして おじいさんは とうとう いちばんしたの いえまで おりてきました。そのいえは とても ちいさな いえでした。」

この場所がまだ陸地だった時に、おじいさんとおばあさんはこの場所で子どもから大人になり、そして結婚した。そしてここに小さな家を建て夫婦になってこの家で暮らしはじめた。
最初の家があり、そのうえに新しい家、またそのうえに新しい家。
最初の赤ちゃんが産まれた家。
こねこがいなくなった家。
娘が結婚して出て行った家。
カーニバルがあった家。


「ぜんぶの いえが つみきみたいに つみかさなっていました」

「そして おじいさんは、ずっと ここに すみつづけてきたのです。」

おじいさんの生き様を感じる。
海の水が上がってきて家の上に家を建て続けなければならない。大きなデメリットがあるのに、おばあさんと一緒に住みはじめた家にずっと住みつづけている。そして「つみきのいえ」だから、おばあさんや子どもたちと過ごした記憶も一緒に積み重なっている。
素敵なことだね。

「はるに なりました。おじいさんの あたらしい いえが できました。」

「かべの われめに たんぽぽが ひとつ さいていました。」

「おじいさんは それを みて うれしそうに わらいました。」

おじいさん、最初よりも幸せそうに感じる。
この家と一緒に積み上げてきた、過去の想い出の上に、「今いる」(存在している)幸せ。
それは忘れてはならないことだ。
過去を大切にしながら、今を大事に生きていく。
そうやって幸せに生きていこうよ。

まとめ

この絵本は、つみきのように積み重なってできた「家」と「人生」を重ねあわせた感情が揺さぶられるような作品だ。
自分の人生は自分が主役。誰にだってストーリーはあるから。積み重ねてきたものがあって今ここにいる。それを時々思い返してみようよ。大切な人との時間も失ってしまったものも、それがなければ今の自分はいない。向き合うことも時に忘れてはいけない。
そうするともっと今の自分が愛くるしくなる。好きになれる。
自分の人生を大事にしていこう。


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